コラム

【薬物・覚せい剤で逮捕】保釈・執行猶予を得られるか

コラム

こんにちは!福生・昭島の弁護士山崎天です。
拝島駅南口のt.h.e法律事務所の弁護士です。

覚せい剤などの薬物に関する刑事事件のご依頼は、一定の頻度でお受けしております。

その中で、もっとも多いのは、覚せい剤を使っていたのは間違いないが、
執行猶予、保釈をとって欲しい、というご依頼です。

これに対しては、「初犯の場合は、通常、執行猶予が付きます」ということをまず説明しております。

覚せい剤取締法違反は、検挙数の多い犯罪で、刑の相場というものがはっきりしています。
初犯でもほぼすべてのケースで、起訴されます。
ただし、初犯なら、一応の反省の態度さえあれば、執行猶予は必ず付く、と考えてよいでしょう。

ですから、大切なのは、裁判への対応よりも、裁判が終わった後、本当に覚せい剤がやめられるか、という
点です。
そこで、接見の際には、薬物の作用をしっかりと説明するとともに、医療的サポートや支援団体によるサポートを
紹介したり、付き添ったりという活動を行っております。

保釈についても、覚せい剤についての認識やサポートの必要性をしっかりと認識してもらうことが前提となるでしょう。
大切なのは、自分の意思ではコントロールしがたいものがあるという現実に向き合うことです。

私は保釈請求については、今までは全件とおすことができてきましたが、だからこそ、「自由になって大丈夫か?」
ということを、捕まっているご本人にしっかりと考えさせています。
「捕まっているから、規則正しい生活ができているだけだ」ということを本人が理解しないまま保釈をすることは本人のためにはならない。それは明らかでしょう。

そういえば、
「保釈にならねーなら私選で頼んだ意味がないっすから」と語気を強めて言っていた依頼者から、
いざ保釈請求の準備が整ったときに、
「先生、俺さ、このまま外に出て、今後一生覚せい剤を使わないと言い切れるか、というと、正直今はそこまでの自信はない。どうすべきなんだろう」

そう打ち明けられたこともありました。

弁護士は、保釈をすることができてしまう。それは自由を回復することであり、覚せい剤の誘惑にさらされ得る環境へと戻してしまうことです。

その怖さを弁護士と本人とが共に理解しなければ、薬物事件の弁護はできません。

2018年に拝島・福生で独立開業してからも、西多摩地域の方から覚せい剤取締法違反の弁護を依頼されました。

その方は覚せい剤での前科のある方でした。二度目の逮捕、二度目の裁判でした。

私は、「前回から一定の期間が経過していれば執行猶予の可能性はあるが、覚せい剤をやめる決意がなければ
お引き受けできない」と説明しました。

ご依頼を受けて、保釈し、職場に復帰させ、執行猶予判決を獲得することができました。
「弁護士としての仕事はした」と言えるでしょう。

ですが、その依頼者が今日、覚せい剤を使わない1日を送ること。
明日も、覚せい剤を使わない1日を送ること。
ストレスを紛らわすために、ちょっと無駄使いをすることがあっても、覚せい剤だけは使わないこと。

そんな風に今日を過ごしてくれていなければ、弁護活動が成功したとはいえないかもしれない。

覚せい剤の事件は、世の中ではありふれた事件かもしれないけれど、でも無罪判決をとったときとは、また違う難しさがあると感じます。

ご家族が覚せい剤事案で逮捕された場合、薬物をやめさせるということを第一に考えて、ご相談、ご依頼ください。

ちなみに、大麻については、覚せい剤のような強い依存性がないことや国際的には使用が違法でない国があるなど覚せい剤とは異なる面があるので、また別の機会にお話ししたいと思います。